
『認知症を患っている〇〇さんが行方不明です』
『逆走したドライバーは軽度認知症を患っていました』
など、ニュースでも「認知症」というワードを頻繁に聞くようになってきました。
「認知症の人が増えている」って、本当なの?」
ニュースでは「認知症は年々増加しています」と耳にすることが多く、不安に感じている方も多いのではないでしょうか。

実は、この話には少しだけ誤解があります。
認知症は人数だけを見ると増えています。
しかし、同じ年代の人が認知症になる割合(発症率)は、一部の国では横ばいや減少傾向を示しているという研究も報告されています。
つまり、「認知症が必ず増え続ける病気」というわけではないのです。
なぜ認知症の人数は増えているの?
一番大きな理由は、日本が超高齢社会になっているからです。
認知症は年齢とともに発症しやすくなる病気です。
高齢者の人数そのものが増えれば、認知症の方も自然と増えていきます。
例えば100人しか高齢者がいなかった時代と、1,000人いる現在では、同じ発症率でも認知症の人数は何倍にも増えます。
つまり、
「人数が増えている=認知症になりやすくなった」
とは必ずしも言えません。
実は「発症率」は下がっているという研究も
近年、欧米では少し希望の持てる研究結果も報告されています。
イギリスで行われた大規模研究では、20年間で同年代における認知症の発症率が約20%低下していました。
また、オランダやアメリカなどでも同様の傾向が報告されています。
その背景として考えられているのは、
・教育水準の向上
・高血圧や糖尿病など生活習慣病の治療
・禁煙
・運動習慣
・社会参加の増加
などです。
認知症は「予防できる可能性」がある病気として考えられるようになってきています。
日本ではどうなの?
日本では高齢化のスピードが非常に速いため、認知症の人数は今後もしばらく増えると予測されています。
厚生労働省などの推計では、2025年頃には約470万人、さらにその後も高齢者人口の増加に伴い認知症の方は増加すると見込まれています。
一方で、日本でも生活習慣の改善や予防活動が広がれば、将来的には発症率を下げられる可能性があります。
つまり、「人数は増えても、一人ひとりのリスクは下げられる」ということです。
以前は、「認知症になったら仕方がない」と考えられていました。
しかし現在では、運動、睡眠、栄養、社会参加、難聴対策など、生活習慣を整えることで認知症のリスクを減らせることが数多くの研究で示されています。

もちろん100%予防できるとは言えません。
一方で、「何もできない病気」でもありません。
今日の小さな習慣が、10年後の脳の健康につながる可能性があります。
現場で感じること
私たちは理学療法士として、多くの方と関わる中で感じています。
認知症を必要以上に恐れてしまうと、不安から行動が止まってしまいます。
しかし、本当に大切なのは、「まだできること」に目を向けること。
脳も身体も、適切な刺激を続けることで変化する可能性があります。
「認知症だから終わり」ではなく、「まだ良くなれるという確信を持てる場所」でありたいと考えています。
参考文献
- Livingston G, Huntley J, Sommerlad A, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet Standing Commission. The Lancet. 2024.
- Matthews FE, Arthur A, Barnes LE, et al. A two-decade comparison of prevalence of dementia in individuals aged 65 years and older. The Lancet. 2013.
- Satizabal CL, Beiser AS, Chouraki V, et al. Incidence of Dementia over Three Decades in the Framingham Heart Study. New England Journal of Medicine. 2016.
- 厚生労働省「認知症施策推進関係資料」
